RAKUS Developers Blog | ラクス エンジニアブログ

株式会社ラクスのITエンジニアによる技術ブログです。

【オフショア開発】あるある記事と3年間のオレオレ経験から見えてくるオフショア開発の真実

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はじめに

はじめまして。ラクスの iketomo(いけとも) と申します。
弊社のオフショア開発拠点(ラクベトナム)は2014年に新規で立ち上がり、今期で7年目に突入してます。
私は4年目~6年目までの3年間を拠点長としてベトナム現地で務めさせていただき、今年6月に帰任させていただきました。

私自身ベトナムでは色々と楽しいことや、苦労したこともありました。
そこでの実体験・経験を踏まえたお話をさせていただきます。

ネット記事を漁ればオフショア開発に関する記事は散見されると思います。
そういった あるある記事 と、ベトナム現地での3年間の オレオレ経験 とを照らし合わせて紹介させていただきます。

そこからオフショア開発の現実・真実を感じ取ってもらえればと思います。
下記の5つの観点からご紹介させていただ、最後にまとめとして感想を少し述べさせていただきます。

この記事ではベトナムホーチミン)での弊社での経験が主軸となっており、他の国の事とは事情が異なる点や、主観が混ざっている点もありますのでご了承ください。

いきなり話が脱線しますがベトナム人に「いけとも」と自己紹介しても「いけもと」って呼ぶ人が多かったです。
なぜかというとベトナムでは味の素(あじのもと)が昔から根付いていて「いけもと」の方が呼びやすいのでしょう。に気づくのに3年かかりました。

では主軸の話へと移らさせていただきます。

(1). コスト

● あるある記事
一般的にオフショア開発ではコストが安価だとされています。
現在のベトナムにおいて、IT人材は初任給で言えば日本の 1/4 ~ 1/3 といったところでしょうか。
ただし成果を鑑みると、そのまま人件費がそのまま直結してコストが 1/4 ~ 1/3となりません。
ITにおいて、日本と同じ成果がでるわけではないので、上記の給与差がそのまま反映されることはないです。

●オレオレ経験
弊社でも3年前は日本の 1/4 ~ 1/5 位の給与でした。
が、後述しますが、ベトナムにおいてIT人材は売り手市場であり、年々給与アップしています。
現在では日本の 1/4 ~ 1/3 位まで上がりました。

ではコストはどうでしょう。
弊社では成果から計算した開発コストを日本と比べると、日本の 1/1.5 ~ 1/2 となっております。

現状においてベトナムのオフショア開発をやればコストメリットは出ると確実に言えます。
ただし、給与が上がっていくので、数年後にコストメリットがでるかどうかは、オフショア開発拠点の成果と品質によるところが大きなウエイトを占めると言えます。
給与の増加と共に、成果を大きくしないと、コストメリットはどんどん下がっていきます。
なので給与アップに負けない成長や独自性が必須だと言えるでしょう。

弊社においてはラクスのクラウドサービスの開発において、成長と独自性を追求する事としました。
半期、通期でベトナムの成果や目指すべき方向(ベトナムにおいてのSaas開発No1)、そして本社の業績を定期的に報告・共有しメンバーと会社の成長を感じてもらうようにしました。
最近ではコストメリットというところを脱し、ラクスのクラウドサービス拡大していく中で純粋に絶対必要な開発チームという位置づけに変わりつつあります。
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※普段は陽気ですが仕事中は真剣

(2). 技術・品質

● あるある記事
一般的には、日本よりオフショア開発拠点の技術・品質は低いと言われています。
ただしベトナムIT技術者は他の東南アジア諸国より技術力が高いとされています。
ベトナムではテストを苦手とするエンジニアもおり、案件によっては品質が高かったり、低くなる時もあります。
QC(テスター)を実装を行うメンバーとは別にアサインすることもあります。

●オレオレ経験
弊社のオフショア開発立ち上げの初期では、技術・品質が低いと感じることも多くありました。
が、年数を重ねベトナム開発メンバーが成長することで、日本の技術・品質に近づいていくことができました。
最近では技術・品質が日本を上回っているケースも散見され、一部のメンバーは日本メンバーよりもコード・仕様に詳しくなってきています。

ベトナム人IT技術者のレベルが低いか?と聞かれれば、個人的にそうではないと考えています。
では何の差があるかと言うと
「日本と持っているスキルセットが違う」
「日本のベテランメンバーが近くに居てすぐに聞きアドバイスを貰うということができない」
という2点の差があります。

「日本と持っているスキルセットが違う」
日本人は品質の部分では優位性を持っています。
一方でベトナム人は新しい技術をすぐに吸収するといった特性があります。
それぞれに良いところがあり、どちらが優れているという優劣はないと感じています。

日本では新卒は研修を数か月した後に、ようやく開発に入ったりすることがありますが
ベトナムでは新卒が入社後に直ぐに開発に入って活躍することができます。

スキルセットは環境が整えば日本と同様のスキルセットを吸収します。若ければ若いほど吸収の速度が速いのは自明の理でしょう。

「日本のベテランメンバーが近くに居てすぐに聞きアドバイスを貰うということができない」
これは日本でも開発メンバーが離れていたり、コミュニケーションが上手くいかないと同様のことが発生すると思います。
聞ける人が近くにいて認識齟齬をなくして開発できる。これが良い開発環境における大きくウエイトを占める部分と考えています。

言葉・文化が違い、距離が離れている異国間ではこういった良い環境を保ちづらいデメリットがあります。

こういった日本との差は、日本側の開発メンバーとのコミュニケーションの風通しが良くしたり、オフショア開発拠点にベテランメンバー(該当会社での在籍が3年以上)が増えてくれば徐々に環境の差を縮めることができます。
また日本化することもできます。なぜならベトナム人は向上心が強く、日本をリスペクトしており日本から学ぼうとする姿勢が強いからです。
日本→ベトナムまたはベトナム→日本へ出張することで日本風のやり方・文化を学んでもらうことも効果があります。
弊社では改善・PDCA・振り返りを繰り返し行うことで次第にメンバーは自発的に考えながら自己成長していく組織へと変貌していきました。
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※コードレビュー指摘の振り返り

(3). コミュニケ―ション

● あるある記事
オフショア開発ではどういったコミュニケーションをするのでしょう。
コミュニケーションをするには以下の方法があります。
「コミュニケーター(通訳兼翻訳)を介す」
BSE(ブリッジSE)を介す」
「英語でやりとりする」
リソースとスキルによりいずれかの方法を選択することになります。

コミュニケーターでもOKですし。
社内の英語スキルが高ければ英語でやるのも良し。
優秀なBSEを採用できるのであればBSEでも良し。

ベトナム親日な人が多く日本語ができるコミュニケーター、BSEが数多くいるといった特徴があります。

時に言葉・文化の違いからか時に認識齟齬が発生することもあり、思ったように指示が通らなかったり、思った成果がでないこともあります。

●オレオレ経験
弊社では「コミュニケーターを介す」を選択しました。
設計書などのドキュメントは日本語←→ベトナム語に翻訳します。
単純な質問は英語で行っています。
難しい質問は、チャット上で翻訳してもらうか、MTGを開いてコミュニケーターに通訳してもらいます。

で、結果がどうだったかと言われると、現在では幸いなことにコミュニケーションによる認識齟齬は殆ど発生していません。
がそこに至るまでは、色々な障壁があり対応してきました。

●コーディングなどの専門的な難しい内容になると通訳の品質が落ちる。
これに対しては週1でIT勉強会をして、通訳をBSEに近い状態になってもらいました。
Webサーバとはなんぞや?というところからプログラミング演習まで行い、IT知識を自学できるとこまで成長してもらいました。
コミュニケーターは沢山いても、ITコミュニケーターは多くはいないという考えで自ら育てるという方針でいきました。

●わからない時でも質問をせずに進め、後に認識齟齬が発生する。
これには2つの要因があります。
「なるべく早くすることを良しとするベトナム文化」
開発においては認識齟齬が一番駄目だ!報連相が大事だ!ということを繰り返し伝え、質問文化を醸成しました。

もう1つは「日本との上下関係から委縮して質問できなくなってしまう」ことです。
日本メンバーがベトナム人を褒めたり、質問には即答してもらうことで、質問しやすい状況を作り、徐々に解決していきました。

●大事な内容が伝わっていない。
重要な事と認識するポイントに文化間の差があり、日本が重要視することが見落とされていて、逆に重要視しないところに重きを置くことがあります。

私は難しい話をする時は、先にコミュニケーターにじっくりと説明して理解してもらい、実際の通訳の時に落ち着いて通訳してもらうようにしました。簡易でもいいので口頭だけではなくアウトプットがあるとさらに通訳の難易度が下がり理解度が上がります。

通訳はリアルタイムで難しい作業です。いきなり専門的な難しい話をして、口頭で話して、はいこれを通訳してくださいと言っても、なかなかできるものではありません。

まずは内容を理解するという時間でしっかり理解してもらい、それをベースに通訳してもらえば、私たちの意図を効率よく伝えてもらうことができます。

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※チームワークとコミュニケーションが大切

(4). IT人材

●あるある記事
オフショア開発と言ってもいろいろな国があります。
ベトナムは他の東南アジアより優秀なIT人材が豊富に揃っていると言われています。
若く優秀な人材を安いコストで獲得することができるというのが通説です。

が、日系や欧米企業の参画が多く近年では 「需要 > 供給」で売り手市場となっており年々給与ベースが上がってきています。

●オレオレ経験
優秀なIT人材が他の東南アジアの国より多いというのは事実です。
また日本よりIT人材を獲得しやすいか問われればその通りです。

では自社が求めるIT人材を簡易に獲得できるかと言われれば、そんなことはないです。
上記しましたが「需要 > 供給」 となっている中では各社で創意工夫が必要です。

ただし、親日の国であり、日本企業に入りたい!日本企業で学びたい!と思うIT人材も数多くいます。
そういった人材の中から自社に合った人材を獲得することになります。

スキルや性格にこだわりがなければ、簡易に獲得することができますが
弊社では求める部分も多く、色々な努力をしつつ、なんとか獲得できているといったところです。
「良い人材へのオファーは当日中に出す」「Facebookで魅力アピール」「過去の面接者にも再度連絡」「リファラル採用のキャンペーン」等、できることはなんでもトライしました。

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※表彰することでモチベーションアップ

(5). 離職・定着率

●あるある記事
ベトナムにおいては日本と比べてIT人材の離職率は高く、定着率は低いとされています。
ジョブホッピングも当たり前で、新卒は2年位で転職することが普通とされています。
せっかく育てたメンバーが、、、と各日本企業の頭を悩ませています。

離職が多くとも成り立つ組織。または離職しない組織を目指すことになります。

●オレオレ経験
弊社でも例にもれず、2年、3年前は離職率が高かったですが、最近ではかなり低くなってきました。
離職率が高くなると、会社としてのノウハウの蓄積ができず、組織としての成長は望めませません。
離職率が高く、定着率が低いことは、どの会社でも大きな課題です。

弊社では最初の3年間はスタートアップということもあり、それ程離職率は高くありませんでした。
その後、弊社での経験をベースに他社に転職することもあり、離職率が高くなりました。
そして現在離職率は低くなっています。

では、何が変わったのか?変えたのか?
弊社では「会社の独自性と居心地の良さ」というところを強め他社との差別化を図りました。

「自発的な組織」言われたことをやるだけではなく自発的に動く。トップダウンではなくボトムアップの行動をより評価する。

「改善・PDCAの徹底。昔は拒否感が強かったですが、繰り返し実施することでチームとしての成長を感じてくれ、今ではこれが普通になり何も言わずとも振り返りMTGを行ってくれます。

「とにかく楽しい」を目指す。何が楽しいかを自分たちで議論させ、実行・主催してもらうようにしました。

「給与アップ」することである程度転職を防ぐことはできます、がそれは青天井で限界があります。
給与を求めるメンバーは給与アップしたとしても、さらに高い給与を目指して転職してしまいます。
そういったメンバーはいつか去る事になるので引き留めない方が良いでしょう。
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※コアバリューの浸透で社内文化の醸成

ベトナム現地での3年間のオレオレまとめ

他文化・他言語ということもあり、いろいろ苦労した側面がありました。
が、いつでもベトナム人の優しさと明るさが私を支えてくれました。

結果としては私が想像していた以上に、ベトナム人の向上心は強く、大きく成長してくれ、今では思った以上の成果を出せる誇らしい組織と変貌することができました。

個人的には安易にコストメリットだけを見てオフショア開発をやってみることはおススメできません。
コストメリットは何もしなければ風化していくからです。
彼らと一心同体となって成長することを決心してください。
その気持ちが伝わり、適切な仕組みやアドバイスをすれば必ず成長してコストメリットを超えた期待以上の成長と成果を出してくれます。

会社独自の戦略で社員の定着率を高めてください。
離職率を抑えることができたなら、あとは成長が待つのみです。

上記のご紹介した内容が皆様のオフショア開発を始めるきっかけや、課題や懸念の解決の糸口になれば幸いです。
長文になりました。最後まで読んでくださった方ありがとうございます!
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※誕生日はちょっとした社内パーティー

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