自己紹介
こんにちは、稲垣です。ラクスの開発組織のプロダクト部 製品管理課の組織のマネージャーをしています。
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こんな方におすすめ
・自身の提案が上司や必要な人に届いてないと感じてる方
・AI時代でも廃れない価値を獲得したい方
・プロダクトマネージャーとして人としての巻き込み力をあげたい方
目次
はじめに
若い頃こう思ってました
『自分が言っていること』と『上司が言っていること』と内容はほぼ同じなのに何故?
自分の意見は採用されず上司が言っていたことが採用されるのか。 自分が一定の立場になったら「誰が」ではなく「何を」言っているかで提案等を採用しよう。
自分が提案する立場となった今、今はどうしているか?そんなことを思ったので、ブログにしました。
AI時代の「言っていること」は差別化できない
情報の精度、論理性、構成力、言語化力──これらはAIが一瞬で整えてくれる時代だなと感じています。
ただ、AIに指示するプロンプトや人によって得られる結果の質は変わります。一方で「正しいこと」を導き出すことが簡単になりました。だからこそ、「何を言っているか」だけでは差別化がされにくくなったように思います。
- 似たような主張が並ぶ会議
- AIが書いたと思われる定例レポート
- 誰が言ったのかわからない実現可能性の考慮が弱い施策の提案
こうした場面で差を生むのは、その言葉に“人”が宿っているかだと思います。
PdMの武器は「信頼」
PdMの役割は、インタビュー等の一次情報や社内の営業・CSからの情報をもとにPRD(製品要求仕様)をまとめることだけでなく、チームを巻き込み、実行へ導くことで、その実行力の源泉は「信用」にあると思っています。
✅ 信用(しんよう)
意味
過去の実績や客観的な情報に基づいて「この人は大丈夫だろう」と判断すること。
信用は、外部的・論理的な根拠に基づいて成り立ちます。
特徴
契約や取引など、ビジネスシーンでよく使われる。
数値や履歴(例:返済実績、業績、資格など)で評価されやすい。
「信用スコア」「信用調査」など、定量的な概念として扱われる。
✅ 信頼(しんらい)
意味
相手の人間性や未来の行動に対して「きっと裏切らない」と期待すること。
信頼は、主観的・感情的なつながりに基づくことが多いです。
特徴
人間関係において重視される。
経験を通して築かれ、裏切られると大きく損なわれる。
「信頼関係」「信頼を築く」など、人と人とのつながりを示す文脈でよく使われる。
上記のChatGPTに聞いた「信用」と「信頼」の違いです。 信用は「点」、信頼は「線」や「面」だと思っています。
AIがいくら説得力のある戦略や戦術を出してくれても──
「その人が言うなら信じてやってみよう」という関係性がなければチームは動きません。
つまり、PdMにとっての“最強のツール”は生成AIではなく「信頼」だと思います。
どうしたら「信頼」を得ることができるのか?
まず「信用」を得る必要がありますが、その方法です。
信用は「見える行動」で判断されるため、まずは小さな成果を着実に積み重ねることが大切です。
1. 約束を守る
- 納期、時間、返答など、小さな約束を確実に果たす
- 「言ったことはやる」を積み重ねる
2. 一貫した行動
- 誰に対しても、どんな状況でも態度や判断がブレない
- 行動に「安定感」があると評価されやすい
3. 結果を出す
- 客観的な成果、数字、品質など、外から見える形での実績
- 失敗しても誠実なフォローがあれば信用は保てる
4. 透明性と誠実さ
- 都合の悪いことも隠さず報告する
- ごまかさず、丁寧に説明できる姿勢が評価される
そして、これらを「信頼」に変える方法です。
信頼は「見えない感情的つながり」であり、深い人間関係の中で自然と育つものです。
1. 共感と理解
- 相手の立場・気持ちを理解しようとする
- 単なる理屈より「この人は分かってくれている」と感じてもらうことが大切
2. 弱さを見せられる関係性
- 完璧な姿よりも、「困っている時に助けてくれた」などの経験の方が信頼を育む
- 自分も相手も「頼り頼られる関係」を目指す
3. 裏切らない姿勢
- 利害に関係なく、誠実である
- 信頼は一度失うと回復が難しいため、誤魔化しや裏切りは致命的
4. 時間をかける
- 信頼は時間と経験の共有から生まれる
- 話す機会や一緒に何かを乗り越える経験が重要
信頼はAIに代替されない「設計資産」だと思っています。
※「設計資産」とは「再利用可能な設計に関する情報や成果物」
信用を積み上げることで信頼を獲得して、それを人間関係まで昇華させることはAIにはできません。
「信頼」があるとどうなるか?
AIが生成したコンテンツは完成度が高いように見えますが、プロダクト開発は「仮説と実験の連続」です。
PdMは、確信のないアイデアを語らなければなりません。不確実性を含んだ提案を、仲間に届けなければなりません。
- まだ答えが出ていない
- 実験段階だけど、見解を持っている
- 方向性はあるが、議論したい
こういった話でも──
- 信頼されているPdMが言えば「よし、やろう」
- 信頼されていないPdMが言えば「なぜ?」「今やる意味ある?」となる
この差は、ロジックでは埋まりません。信頼があるからこそ、意思決定がスムーズになり、実行力が加速します。
最後に
AIは“何を言っているか”を補完し、人は“誰かであること”を磨く」
AI時代における言語化・発信・言葉の価値は、「内容の質」から「発信者の信頼」へとシフトしています。
これは逆説的に、あなたの言葉が、あなた自身の信用を映す鏡になる時代とも言えます。
単なるアウトプットではなく、 「誰が言っているか」を磨くプロセスそのもの。
だからこそ、PdMやビジネスパーソンは 「正しいことを言う人」ではなく「信じて動きたくなる人」になることが最も強い武器になると思います。
声をかければチームが動く、議論を投げれば前に進む。
そんな「誰が」になるには、普段のふるまいと、信頼を育てる仕組みから見直してみるのが良いかもしれません。