
こんにちは、CTOの公手です。
この4月から、ラクスの新しい中期経営計画がスタートしました。
前中期経営計画の5年間、私たちは「ハイグロース」を掲げ、売上・組織規模ともに約4倍という急成長を遂げました。次なる3年で私たちが目指すのは「クオリティグロース(質の高い成長)」です。AIを駆使して組織をより筋肉質に変え、真の意味で「強い」組織へと進化させるフェーズに入ります。
この方針のもと、次の中期経営計画で開発本部が推進する3つのプロダクト戦略と、それを実現するために不可欠な3つの変革について、簡単ではありますが共有できればと思います。
3つのプロダクト戦略:顧客体験の変革と領域の拡大
1. AI機能実装によるユーザー体験の変革
単なるUIの追加ではなく、AIがユーザーの意図を汲み取り先回りして処理を完結させる「AIエージェント」を全主要サービスへ展開します。目指すのは、顧客の業務工数を根本から削減すること。ユーザー操作自体を大幅に削減していく方向へ舵を切ります。また、AIエージェントから利用しやすいようにOpenAPIやMCP(Model Context Protocol)サーバーの展開も進めていきます。必要に応じてAI時代に適した技術刷新を厭わず推進していく方針です。
2. エンタープライズ市場への本格参入
中堅・中小企業市場で培った強みを武器に、大手企業市場へ本格参入します。大規模トラフィックへの耐性、膨大なデータハンドリング、権限管理や監査ログなどの高度なガバナンス要件、エンタープライズ特有の複雑な業務要件に対し、機能レベル、アーキテクチャレベルでもしっかりと対応を強化します。
3. 統合型ベストオブブリードへの進化
楽楽シリーズをさらにシームレスに繋ぎます。前中期経営計画で実現したUI統一や楽楽従業員ポータルの取り組みを、さらに推し進めていきます。従業員ポータルをハブとしたデータ連携を深化させ、顧客が「最高の個別製品(ベストオブブリード)」と「統合された利便性」を同時に享受できる状態を技術的に実現します。
これらを実現するための3つの変革
上記のプロダクト戦略はいずれも難易度が高く、これまでの開発プロセスの延長線上では達成できません。そこで、私たちは以下の3つの変革を断行します。
AIネイティブ開発プロセスへの変革
ここ数年のAI駆動開発の進化はめざましく、単なる補助ツールではなくなりました。すでにラクスでも、チームや機能によってはコード生成率が90%を超える事例が出始めており、平均しても50%程度のコーディング時間の削減は実現できています。しかしながら、生成AIの真価はコーディングの効率化にとどまりません。エンジニア自身がAIの特性と限界を誰よりも理解し、「生成AIが開発の全プロセス(要件定義、設計、コーディング、テスト、デプロイ)を効率化すること」を前提としたプロセスへと作り変える必要性が出てきています。
まずは、コード生成率を極限まで高め、人間が「ゼロから書く」時間を削減します。これにより、エンジニアの工数を「AIのコントロール」や「より高度な全体設計」、そして「顧客の真の課題解決」へとシフトさせます。AIを活用して開発速度を上げることは、そのまま顧客への価値提供サイクルを速めることに直結します。
クラウドネイティブオンプレミス(CNOP)の強力な推進
私たちが考えるCNOP基盤とは、オンプレミスのコスト効率とパブリッククラウドの技術・思想(コンテナ、K8sなど)を融合させ、高いアジリティを実現するものです。また、パブリッククラウドとのハイブリッド構成も容易にし、ワークロードに応じた最適な環境選択を可能にするものでもあります。
具体的に推進することは、一部のサービスで実現できている、オンプレミスのコストメリットを維持しつつ、Kubernetes(K8s)を中心としたコンテナ基盤運用の全面的な導入です。 さらに、自社製マネージドサービスを構築するなど、パブリッククラウドに匹敵する開発の容易性とリリース速度(アジリティ)の実現を目指します。 自社インフラならではの高品質・高可用性を実現することで、エンタープライズ顧客の高度な要求に応えられるインフラ基盤を提供します。
グローバルボーダレス開発
ラクスには、一つのSaaS企業に匹敵する規模のサービスが複数存在し、サービスの総数は10を超えます。これらのサービス群において、この3つのプロダクト戦略をスピーディに実現するには、必然的に開発ボリュームが増大します。これを国内リソースだけで賄うのは現実的ではなく、海外のエンジニアと「一つのチーム」として機能する体制が不可欠です。
特に、生成AIの進化により、言語の壁やドメイン知識の壁は劇的に低くなっています。この技術を最大限に活用し、ベトナムやインドネシアなどの海外拠点を、単なる受託先ではなく、同じ品質基準と設計思想を共有する真のパートナーとして統合していきます。拠点の違いを意識することなく、仕様の同期と開発の加速を可能にする「ボーダレスな共創体制」を実現します。また、多様な視点を持つグローバルな組織力が、この進化の激しい開発現場において、強力な革新性をもって変革を推し進める助けになると考えています。
変わらない価値観:結局、それを支えるのは「顧客志向」
これからの時代、エンジニアの働き方は劇的に変わります。AIネイティブ開発による「超シフトレフト」が進み、技術の自動化が進むほど、エンジニアに求められるのは「何を作るべきか」という判断力と顧客への深い理解です。
ラクスのプロダクトをご利用いただいているのは、日々オフィス業務をこなしている実務担当者の方々です。その方たちが「あ、楽になった」「もっと重要な仕事に時間を使えた」と感じてくれる瞬間のために、私たちは仕事をしています。 どれだけ技術やプロセスが変わろうとも、私たちの根底にある価値観は創業当初から一切ぶれません。それは「顧客志向」です。技術はあくまで手段であり、目的は常にお客様のペイン(課題・痛み)を解消することにあります。 このシンプルな原則を胸に、私たちは次の中期経営計画を実現していきます。
今回は概要の説明にとどまり、やや抽象的な内容となりましたが、また機会があれば、それぞれについてより具体的に説明したいと考えています。
AIの台頭に不安を感じる声は、社内でもよく聞かれます。しかし私は、変化の大きい時代だからこそ、「技術の自己目的化を排し、顧客価値を届けることに全力を注げるエンジニア・デザイナー」が最も強いと確信しています。この軸がある人は、どんな新しいツールや手法が出てきても乗りこなせると思っています。ラクスを、そのようなエンジニア・デザイナーが集まる組織にしていきたいと思っています。 まだ完璧ではありませんし、泥臭い課題も山積みです。しかし、その壁を共に壊し、この新しい挑戦に、一緒に楽しみながら取り組んでくれる仲間を募集しています。