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アジャイル × ビジョンで継続的に成長するチームへ ~ Agile Japan 2020登壇レポート

id:radiocat です。11/17~18に開催されたAgile Japan 2020で登壇の機会を頂きましたのでレポートします。

Agile Japanとは

今年で12年目となる日本最大規模のアジャイルのイベントです。今年は5月に東京で開催される予定でしたが、コロナの影響でいったん中止となったあと、改めてオンライン方式でこの11月に開催されることになりました。

2020.agilejapan.jp

スポンサーとしても参加

弊社はスポンサーとしても参加させて頂いており、公式サイトのセッションスケジュールのページにはしっかりと弊社のバナーが表示されていました。ありがとうございます。

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セッションスケジュールのページに表示されている弊社のバナー

実は昨年もスポンサーとして参加させて頂き、ブログ記事を投稿しています。

tech-blog.rakus.co.jp

イベントの風景

今回のイベントは eventhub というプラットフォーム上で配信されました。セッション動画が2トラック並行でライブ配信され、画面右ではslidoで質疑応答が行えるようになっていました。

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Agile Japan 2020 オンライン会場

同じ画面上でセッションスケジュールや運営からのお知らせを確認したり、参加者同士の情報交換のためのメッセージ機能もありました。他にもスポンサーの出店ブースで資料をダウンロードしたり、参加者のスケジュールを押さえて個別ミーティングを行う機能もあり、リアルイベントの会場で行っていたことがそのままオンライン会場で再現されていました。オンラインイベントの進化を感じます。

変わる勇気・変えない勇気

今年のイベントテーマは「変わる勇気・変えない勇気」でした。公式サイトのメッセージには、アジャイルの広まりや日本経済の状況などを踏まえ、今までの仕組みや習慣を見つめ直して未来へ向けてチャレンジする時が来たと言えますが、すぐに変えられない部分も多くあり、変わる部分と変えない部分を勇気を持って見極めていきましょうと書かれています。

このテーマを踏まえて弊社からもセッション公募に応募させて頂き、登壇の機会を頂きました。

登壇の現場

イベントは平日の昼間に開催ということで、オフィスの会議室からオンライン登壇させて頂きました。大阪のオフィスからでも手軽に参加できる点はオンラインイベントならではです。

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オフィスの会議室からオンライン登壇

セッション紹介:「中小企業のエンジニアチームを”楽”にする」を目指す組織マネジメントの変わる勇気と変えない勇気

ここからは登壇させて頂いたセッション内容をご紹介します。

なぜアジャイル?なぜビジョン?

今回は「ビジョン」という言葉に焦点を当てて、アジャイルとビジョンについてお話ししました。

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Agile Japan 2018のテーマは「Why Agile」でした。「なぜアジャイルに取り組むのか?」ということが語られる背景として、アジャイルを取り入れること自体を目的にすることの危険性がよく叫ばれています。また、ヤクの毛を刈るようにアジャイルに取り組むことだけを続けてしまい、組織が本来目指すべき大きな目標を見失ってしまうこともあります。

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この発表では、私たちのチームがWhyと向き合ってアジャイルを取り入れ、ビジョンを生み出すことで、ヤクの毛刈りや自己目的化から脱出してきた事例をお伝えしました。

チームにアジャイルを取り入れてカイゼン文化を生み出す

2019年に現在のチーム体制がスタートし、チームの立ち上げを図る中で最初に目指したのがアジャイルを取り入れながらカイゼン文化を生み出すことでした。

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まずはPDCAサイクルを習慣化するために、1週間単位の計画をしっかり立てて、その後ふりかえりを導入しました。そして、スケジュールマネジメントを強化するためにスプリント制度を導入し、チームのパフォーマンスを最大化するためにサブチーム体制へ移行しました。

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アジャイルの要素を少しずつ取り入れてカイゼン文化を定着させ、チームの成長を実感することができました。しかし一方で、カイゼンに終わりがなく、スクラムも未定着でした。スクラムの要素であるスプリント制度を導入してはいますが、この時点ではまだ反復開発と呼んでおり、スクラムの要素をすべて取り入れることはできていませんでした。

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カイゼンには終わりがなく、いつスクラムになるのかも見えていない、まさにヤクの毛刈り状態です。「みんなでアジャイル」には「アジャイルの旅を成功させる第一歩は、そもそもなぜ仕事のやり方を変えたいのかを理解することだ。」と書かれています。私たちはなぜアジャイルを取り入れてカイゼン文化を生み出した先で何を実現したいのか?と考えることにしました。つまり、チームのビジョンを生み出すということです。

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ビジョンを生み出してヤクの毛刈りから脱出

書籍「ザ・ビジョン」によると、以下のようにビジョンを生み出す3つの基本要素が紹介されています。

  • 有意義な目的
  • 明確な価値観
  • 未来のイメージ

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弊社は「中小企業を楽にする」という理念を掲げています。限られたリソース、規制やルールのしがらみに縛られることも多いのが中小企業です。私たち自身もその環境に身を置いています。まず、中小企業のエンジニアチームである私たちがこれまでに取り組んできた「アジャイルを土台にしたカイゼン文化」を継続して、チームの一人ひとりが成長することが、有意義な目的であり、明確な価値観であると考えました。

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そして、私たちの有意義な目的と明確な価値観を具体化していく取り組みをそのままモデルにすることを未来のイメージと捉えました。これらを踏まえて定義したのが「中小企業のエンジニアチームを”楽”にするモデルをつくる」というビジョンです。

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そして、ビジョンに向けて段階的にアジャイルを取り入れていくロードマップを作成しました。まずはチームビルディングを行って、アウトプットを安定化します。次に、パフォーマンスアップを目指して、リリース速度を上げ、プロダクトアウトカムを強化します。そして、変革・再ビルディングのためにチームをスケールアップさせ、最後にこれらの取り組みをモデル化するというロードマップです。

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アジャイルを土台にしてビジョンを生み出したことで、この先にどうありたいのか?を明確にすることができ、チームの実態をふまえて今後どのように成長していくかのイメージが持てるようになりました。一方で、具体的なアクションは決まっていないので、チームの全員が完全に腹落ちしているわけでもない課題がありました。

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実際にその課題がすぐ表面化しました。ロードマップの2つめのステージである「リリース速度アップ」は実態にあっていないことがわかりました。アジャイルを取り入れることが目的となってしまい、実態と合わない目標になっていたのです。つまり、自己目的化に陥っていました。

前出の書籍「ザ・ビジョン」には「ビジョンづくりは現在進行系のプロセスであり、たえずそれについて話し合っていく必要がある。」と書かれています。ビジョンを実現するためには、何がいちばん大切なのかを思い出させて、みんながビジョンを見失わないように助け、可能な限り障害を取り除いて、ビジョンづくりを継続する必要があるのです。

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ビジョンづくりを継続して自己目的化から脱出

ビジョンはつくっただけではなく、継続的につくり続ける必要があることに気づいた私たちは早速ロードマップを見直しました。実態に沿っていない「リリース速度アップ」への取り組みをいったん保留し、まずプロダクトアウトカム強化に取り組むことにしました。事業部門との連携を強化し、「プロダクトマネジメント体制」を構築しました。これまで取り入れてきたアジャイルを継続しながら、プロダクトにフォーカスしていく体制を目指しています。

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サブチーム体制も実態に合わせて見直しました。開発力が安定してきたので、オフショアチームの支援を開発リード側のサブチームに移し、よりプロダクト開発に注力する体制にしました。また、オペレーションリード側はチームの成長を目指してDevOpsなどの新たなテーマに取り組む体制にしています。

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チームがビジョンを見失わないように様々な取り組みを行っています。半期ごとのチーム目標設定の際には、必ずビジョンとそれに向けた現状をおさらいしています。1on1ではフラットな相談だけでなく、チームのビジョンと個人の成長目標のすり合わせを行っています。ビジョンに向けてドラッカー風エクサイズを行ってチーム内の価値観のすり合わせも行いました。中堅メンバー中心にロードマップの次の戦略を考えるチーム戦略会議も行っています。

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また、ビジョンを浸透させるためにビジョンに向けたアウトプットも行っています。自社で開催しているイベントやエンジニアブログで、ビジョンへ向けた取り組み事例を紹介しています。今回のアジャイルジャパンのようなイベントでの発信もビジョンを浸透させるアウトプットのひとつです。

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アウトプットすることで、自分たち自身のビジョンに対する認識を定着することにつながります。ただ、イベントへの参加やブログの発信などは、採用やブランディングなど会社としての別の目的もあります。それらとチームのビジョンをすり合わせながら、積極的に関わりを持つことが、チームのビションづくりを継続させます。1つひとつは小さいアウトプットでも、モデルをつくるという自分たちのビジョンに向けた意思表示を継続することで、小さく試して育てていくことにつながると考えています。

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私たちの「変わる勇気と変えない勇気」

最後に、私たちの「変わる勇気と変えない勇気」についてまとめます。変わる勇気とは、アジャイルを土台にしたチームのスタイルです。変えない勇気とは、ビジョンに向かう姿勢です。

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アジャイルを土台にしたチームのスタイルは、カイゼンを続けたり、アクションを見直し続けるために、常に変わる勇気が必要です。ビジョンに向かっていく姿勢は、スクラムへの適応をチームの目標にせずにビジョンづくりを継続し、ビジョンに向けたチームの取り組みをアウトプットし続けるという、姿勢を変えない勇気が必要です。2つの勇気を継続することで、チームの現状は少しずつスクラムにも近づいています。

ビジョンに向かっていく姿勢を変えない勇気をもつことで、アジャイルを土台にして常に変わっていく勇気を生み出すのです。

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以上のように、アジャイルとビジョンはチームの継続的な成長につながると考えています。そのために私たちが取り組んでいるのが、カイゼン文化を生み出して、ビジョンを生み出し、継続していくという、3つのステップです。この内容が中小企業のエンジニアチームの皆さんの継続的な成長のお役に立てれば幸いです。

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継続的な成長のために仲間を募集しています

私たちのチームではスクラムマスターを募集しています。スライドでもご紹介した「ビジョンづくりを実現するリーダーシップ」を発揮して、私たちのチームで一緒に働いてみませんか?
もちろん、スクラムマスター以外の様々な職種も募集中です。よろしければぜひご連絡ください。

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