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オンラインのアジャイルな体験 ~スクラムフェス大阪2020イベントレポート~ #scrumosaka

id:radiocat です。6/26、27に開催されたScrum Fest Osaka 2020に参加し、登壇させて頂きました。イベントをレポートします。


Scrum Fest Osaka 2020とは?

www.scrumosaka.org

公式サイトには次のように書かれています。

Scrum Fest Osakaはスクラムの初心者からエキスパート、ユーザー企業から開発企業、立場の異なる様々な人々が集まる学びの場です。

昨年が初開催で、今回が2回目となるイベントです。前回は2トラックで20以上のセッションが行われ、関西としてはスクラムに限らずエンジニア向けイベントとして最大級のイベントです。全国から様々な境遇や立場の人が集まって、それぞれの取り組みや知見を共有しあう、参加者全員の学びの場です。
ちなみに、昨年と今回オンライン開催に変更される前まで会場となる予定だった 関西大学 梅田キャンパス KANDAI MeRISE は弊社の大阪オフィスのすぐ隣です。

どんなイベント?

登壇者は昨年から公募され、既に決まっていましたが、コロナの影響でオンライン開催に変更となり、全国19コミュニティーを集めて各トラック並行で開催されるという異例の内容・規模となりました。19トラックともなると、ご覧のとおり一覧で見ることができない規模です。

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19トラックのイベント一覧

オンライン開催ということで、参加者は DiscordZoom の利用が必須となりました。

会場はDiscord

参加の申込みを行って運営側へDiscordのアカウントを連絡するとイベント専用のDiscordサーバへ招待されます。Discordにはイベントのお知らせや、各種連絡、当日のオープニングや基調講演で使われるメインチャンネル、各コミュニティーのチャンネルに加え、雑談、トイレ?、2次会など、参加者が思い思いに参加できる無数のチャンネルがあります。

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Discordの画面

イベントの申し込みが終わるとイベント開催の数日前からDiscordに招待され、当日だけでなく準備中の状況なども確認できるようになっていました。もちろん、開催前から参加者同士で交流することができます。そして、開催後の現在も継続して交流可能です。開催当日を軸としつつも、その前後の時間も使って参加者全員でイベントを作り上げていく形が、イベントの新しいスタイルとして、オンラインイベントの可能性を感じることができます。

セションはZoom

開催当日は、セッション開催の時間になるとDiscordのチャンネルにZoomのURLが流れてきます。そこからZoom上で登壇者の発表を聞くという流れです。

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セッションの様子

登壇者から聴講者への一方向のセッションだけでなく、オンラインの視聴者を巻き込んだりチャットツールを使ってディスカッションするなど、オンラインでの新たな試みを行っているセッションもありました。

数々の企業・団体スポンサーが支援

アジャイルを実践中の様々な企業・団体がスポンサーとしてイベントを支援しています。弊社もシルバースポンサーとして参加させて頂きました。

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スポンサーの紹介

オープニングイベントでしっかり紹介して頂いていました。参加したイベントのスポンサーに自社が名を連ねているのはいつ見ても嬉しいものです。

基調講演

基調講演はアジャイルコーチであり、『SCRUM BOOT CAMP THE BOOK』の共著者としてもおなじみの株式会社アトラクタの永瀬さんによる『今あえてのスクラム』でした。

真ん中が空いた、縦書きの、変わったスライドになっているのは理由があります。なんと、画面共有でスライドを投影するのではなく、ご本人が真ん中に映りながらバーチャル背景にスライドを投影するというスタイルで発表されたのです!
その様子は参加者だけのお楽しみなのでご紹介できなくて残念ですが、背景に使われたスライドを見ながらなんとなく想像していただければと思います。

ちょっとした「うっ」は成長のチャンス

今回の登壇にあたり、イベントがオンライン開催に変更されたことで最初は「うっ」と思われたとのことです。これは私も登壇させて頂いたのでわかります。オンラインという形で前提が変わって、どのようなセッションを行おうかと戸惑いました。しかし、このような状況にチャレンジすることは成長のチャンスでもあるということです。

スクラムは非秩序な状況を乗りこなすことに適したフレームワークです。

  • 染み付いた行動の癖で、予見できる範囲でスプリントを回していないか?
  • ふりかえりでプロブレムに対するトライばかりしていないか?
  • 行動する前に既存の価値観で判断してしまっていないか?

変化の時代だからこそチャレンジしてみよう。やってみて、失敗して、学習しよう。そういう内容のセッションでした。そして、前述のように背景にスライドを投影するという発表にチャレンジすることでもそれを伝えていただいた内容だったと思います。この発表を聞くだけでもイベントに参加する価値のある内容でした。

登壇レポート

2日目は19トラックに分かれて各セッションが行われました。セッションだけでなく、各コミュニティーのDiscordチャンネルでは様々な情報交換がされていてとても賑わっていました。 ちなみに、セッションは録画され(登壇者が承諾した場合)、当日の参加者には約1ヶ月間公開されているので、19トラックの発表を後日ゆっくり見ることができます。アフターイベントとして、録画試聴会なども開催されています。これもオンラインイベントの新たなスタイルです。

最後に、弊社から登壇させて頂いた内容についてレポートさせてください。

スクラムちゃうがなと言われてもやってみぃひん?

スクラムは理解は容易ですが、習得は困難だと言われています。実際にやろうとすると、思ったとおりできないと感じることが多々あります。特に我々のような中小企業の開発の現場では制約も多く、長年やってきた従来型の開発プロセスを全て刷新して充分環境を整えてからスクラムを導入できるケースは稀です(もちろん中小企業ではなくても様々な制約はあると思いますが、今回の発表は我々の境遇に視点をあてた内容になっています)。同じ境遇の方々に我々の取り組みが参考になればとの思いで発表させていただきました。

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スクラムちゃうがな問題

少しずつカイゼンする

カイゼン文化をつくるには、まずスクラムのベースとも言えるPDCAを回す状態をつくることです。課題が山積していていることは認識していても、計画を立てて、実行後に振り返る流れが習慣化していなければカイゼンは進みません。
それができたらチームで開発している状態をつくることに着手します。従来型の開発プロセスでよくある課題が、縦割りで担当者に業務がアサインされ、隣の人が何をやっているかもわからない状態で仕事をしている状態です。スケジュールマネジメントをしっかり行い、チームとして成果を出せる状態をつくることで、個の活動からチームの活動になり、カイゼンをチームの文化にする土台ができます。

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少しずつカイゼンする(私たちの場合)

ありたい姿を探る

カイゼンは進みましたが、いつスクラムになるかのゴールが見えませんでした。そこでチームとして「中小企業のエンジニアチームを楽にするモデルをつくる」というビジョンを設定し、それに到達するまでのロードマップをつくりました。ロードマップの段階を踏んでいくことでスクラムに近づき、チームのあるべき姿に到達させるのです。

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チームのロードマップ

原則を土台にする

チームのロードマップをつくって進めていたものの、自分たちの視点に偏っていて顧客視点が持てていないことに気づきました。自分たちのカイゼンを進めてチームをアップデートしても顧客に価値を届けられなければ意味がありません。アジャイルの原則に立ち返れば当たり前のことができていないと気づいたのです。

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原則にむきなおる

経験から学ぶ

これらの取り組みから、カイゼンとありたい姿、原則の土台を3つの柱として経験しながら学ぶことでスクラムに近づくと考えました。これは経験学習というモデルをベースにしています。

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経験から学ぶチームでスクラムに近づく

スクラムちゃうがな」から始まる

経験から学ぶモデルの中心には「意欲と信頼」があります。私たちは「スクラムちゃうがな」と感じて悩んだとき、何かを変えたいという意欲を持っています。つまり「スクラムちゃうがな」と感じたことは経験から学んでスクラムに近づくスタート地点なのです。

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スクラムちゃうがなから始まる

オンラインならではのチャレンジ

スライドではわかりませんが、イベント当日は途中でネコが合いの手やツッコミを入れる部分を、あらかじめ録音しておいた合成音声を流すことで自問自答する雰囲気を演出してみました。これも私なりのオンラインならではのチャレンジです。

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ネコによるツッコミ

ふりかえりが重要ではない!?ふりかえりの活用方法について

弊社からもう1名がふりかえりについて発表させて頂きました。発表は参加者と一緒にふりかえりについて考えるスタイルになっており、Discordのチャンネルで様々な意見が共有されていました。これもまたオンラインならではのスタイルです。

retrospective.connpass.com

この発表は、再演イベントが企画されていますので内容の紹介は割愛させて頂きます。興味のあるかたはぜひイベントにご参加ください。

非秩序を乗りこなすアジャイルなイベントでした

イベント全体を通して、参加者全員で変化に向き合って適応しようと取り組み、みんなでイベントの新しい形をつくりあげていく空気に溢れていました。イベント自体がアジャイルな体験だったと言えます。

オンラインでのこのようなイベントは世界レベルでみてもまだ事例が少ないのではないかと思います。そんな中で最終的に500人以上がDiscordに集まる大盛況のイベントとなったようです。そんなイベントを作り上げた実行委員のみなさんのコメントや裏話がYoutubeで公開されていますので合わせてご覧ください。


スクラムフェス大阪 開催中に実行委員が感慨を語る

Discordのチャンネルでは現在も様々な情報交換が行われており、その刺激を受けて参加者がそれぞれの現場で次のScrum Festに向けた取り組みをスタートさせています。私たちもまた次回のイベントで採択されるようにチャレンジを続けたいと思っています。
弊社でも様々なオンラインイベントが企画されており、取り組み内容を共有しています。7月末には楽楽明細開発チームのスクラム事例の発表も予定されています。よろしければぜひご参加ください。

rakus.connpass.com

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