
こんにちは、稲垣です。
先日、こちらのイベント
generative-ai-conf.connpass.com
のLTで話しました内容についてnoteでもう少し詳しくまとめました。
イベントの登壇資料はこちら
になります
「AIをどう使うか」ではなく、「どう溶け込ませるか」。
生成AIが当たり前になりつつある今、プロダクト開発においても「AIをどう取り入れるか」だけでなく、「どう文化として根づかせるか」が問われています。私たちラクスでは、このテーマに真正面から取り組み、「AIをプロダクトづくりに溶かす」挑戦を続けています。その過程で見えてきた“3つの壁”と、それを乗り越えるための工夫を紹介します。
🧩 AI浸透を阻む3つの壁
① プロセスやプロダクトフェーズの違い
ラクスでは10以上のプロダクトを展開しており、開発フェーズも手法もさまざまです。成熟期の「楽楽精算」と、探索期の新製品では、スピード感も意思決定も全く異なります。結果として、AIを「一部業務」に取り入れることはできても、「プロセス全体」に溶け込ませるのは簡単ではありません。
② 職種の役割の曖昧さ
PdM、デザイナー、エンジニア。理想的な分担表は描けても、実際には職種間の境界はあいまいです。そのため、AI活用が“点的”な取り組みに留まり、組織全体としての成果につながりにくいという課題がありました。
③ AIに対するリテラシーや向き合い方の違い
AIとの関わり方には段階があります。
- 「AIを理解する」
- 「AIを使いこなす」
- 「AIと共創する」
多くの人が2段階目まで到達している一方で、3段階目――AIを“共創パートナー”とするレベルにはまだ届いていません。この差が、AIの価値を組織全体に広げるうえでの壁になっています。
🛠️ ラクス流・3つの壁との向き合い方
1. 最初から共通化や理想を追い求めない
AI活用を一律に標準化しようとすると、議論や調整に時間がかかりすぎてスピードを失います。そこで私たちは、チーム単位で自由に試し、成功も失敗も共有する形をとりました。
チャットや勉強会、月次ミーティングで知見をオープンに蓄積。共通化は「後から考える」方針にすることで、むしろ現場主導の自走文化が生まれました。
「誰もが使えそうなものは、結局誰にも刺さらない。」だからまず、AI活用のトッププレイヤーを活かす環境をつくる。
2. 職種としての定義を決める
ラクスでは、プロダクトごとに異なっていた役割定義を整理しました。「楽楽精算」ではDACIモデルを導入し、誰がDriver・Approver・Contributor・Informedなのかを明確化。また、PdMとPMMのデュアルエンジン体制を取り、「価値をつくる人」と「価値を届ける人」が連携できる仕組みを構築しています。
AIによって得られた余白の時間は、各職種が専門性を磨くために使う。役割を明確にするほど、AI活用の深さは増していきます。
3. みんなが楽しく使う
AIを「業務目標」に入れるだけでは文化になりません。大事なのは、楽しそうに使う姿を見せることです。
「こう使ったらすごく便利だった」「これは失敗だった」――そんな小さな話を日々共有することで、自然と周囲にも火がつきます。AI活用を“義務”ではなく、“遊び心ある実験”として扱う。それが組織を動かす一番のエネルギーになります。
🚀 おわりに ― AIを“当たり前”にするために
ラクスは今、「生成AIの標準搭載」と「統合型ベスト・オブ・ブリード戦略」という2つの進化に挑戦しています。AIを特別なものではなく、“当たり前の道具”にする。そして、AIによって生まれる余白を、人がよりクリエイティブな仕事に使えるようにする。
プロダクトづくりにAIを“溶かす”とは、単なる技術導入ではなく、人とAIが共に学び、楽しみ、進化していく文化をつくることなのです。