先日、株式会社ラクス主催の技術イベント「RAKUS AI Meetup」がオンラインで開催されました。本イベントは、ラクスのAI技術への取り組みや活用事例を社外の方々にも広く知っていただくことを目的としており、当日は多くの方にご視聴いただきました!!
「楽楽精算」「メールディーラー」といった主力サービスへのAI機能組み込みの裏側から、開発本部全体でのAIツール活用による生産性向上まで、3つの具体的なセッションを通して、ラクスのAI開発のリアルが語られました。
本記事では、各セッションの模様をダイジェストでお届けします!
(記事執筆は当イベントの司会も担当しました、技術広報の川東がお届けいたします)
- セッション1:AIは精算業務をどう変える?自律型エージェントが実現する未来のワークフロー
- セッション2:メールディーラーにおけるAI活用事例~クレーム検知機能リリースの舞台裏~
- セッション3:自律型AIエージェントDevinを全エンジニアへ展開!!ラクス開発本部のAI駆動開発事例
- まとめ
- RAKUS Tech Conference 2025 開催します!!
セッション1:AIは精算業務をどう変える?自律型エージェントが実現する未来のワークフロー
登壇者:楽楽精算事業統括部 AIエージェント開発課 課長 石田浩章
トップバッターは、主力サービス「楽楽精算」へのAIエージェント導入をミッションとするAIエージェント開発課 課長の石田です。発表は、AIエージェント開発課が立ち上がった「怒涛の1ヶ月」の裏話から始まりました。
「楽楽精算ってなんですか?」という衝撃的な状況からスタートし、わずか1ヶ月でチームを組成。しかし、そこには「AIエージェント像の不明瞭さ」「多すぎるステークホルダー」「圧倒的なリソース不足」という大きな壁が立ちはだかっていました。
この困難な状況を打開するために、石田が繰り出した3つの「秘策」が非常に興味深いものでした。
- 秘策1:LEAN開発で不明瞭なAIエージェント像を発見
- 従来のウォーターフォール型ではなく、作りながら・聞きながら学ぶLEAN開発を採用。1週間サイクルでモックアップやプロトタイプを作成し、顧客ヒアリングを繰り返すことで、あるべき姿を具体化。
- 秘策2:チームメンバー全員で臨むオールラウンド型組織
- 事業責任者とエンジニアが一体となった少数精鋭チームを組成。職能の垣根を越え、全員が「自分ごと」として開発に取り組むことで、スピード感と当事者意識を醸成。
- 秘策3:「トリAI(アイ)ズム」で足りないリソースを突破
- 「とりあえずAIを使ってみよう」というスタンスで、Claude CaudeやDevin、MiroのAI機能などを積極的に活用。6人目、7人目のメンバーとしてAIを使いこなし、リソース不足を補いました。
現在は、「経費精算」における「領収書」を元にした「申請支援」機能に注力しており、今後は段階的にクローズド版の提供や機能拡大を進めていくとのこと。ゼロからチームを立ち上げる生々しいストーリーに、参加者からも多くの共感が寄せられました。
セッション2:メールディーラーにおけるAI活用事例~クレーム検知機能リリースの舞台裏~
登壇者:ラクス クラウド事業部 メールディーラー開発課 PdM 神山賢太郎
続いて、問い合わせ管理システム「メールディーラー」のPdM(プロダクトマネージャー)であるメールディーラー開発課 PdMの神山が登壇。ラクス製品の中で最速でリリースされたAI機能「クレーム検知機能」の開発の舞台裏が語られました。
この機能は、ChatGPTがメール本文を解析し、クレーム性の高いメールを自動で検知・ラベリングすることで、炎上を未然に防ぎ、迅速な初期対応を可能にするものです。
開発プロセスでは、まず社内で仮説サイクルを回し、その後、顧客を巻き込んで実証サイクルを進めるという2段階のアプローチを採用。
特に興味深かったのは技術調査のパートです。
- Pythonライブラリでの感情分析 vs GPTでのクレームスコア付け
- 当初はPythonライブラリでの感情分析を検討。しかし、ビジネスメール特有の「へりくだった表現」を過剰にネガティブと判定してしまう課題が発覚。
- 一方、GPTにプロンプトを工夫してクレーム度合いをスコアリングさせたところ、精度が大幅に向上。最終的にGPTの採用を決定しました。
β版の検証では、ToB(法人向けビジネス)では高い精度を発揮した一方、ToC(個人向けビジネス)では誤検知が多いことが判明。この結果を受け、ターゲットを明確にToBに絞るという戦略的な意思決定が行われました。この結果も高速にPDCAを回す仮説サイクルによって得られたものです。
リリース後は、「会議中にクレーム通知を受け、即座に担当者に指示出しができた」「大量のメールの中からクレームを優先的に対応できるようになった」など、顧客から高い評価を得ているそうです。最速リリースを支えた仮説検証と迅速な意思決定のプロセスは、多くの開発者にとって参考になる内容でした。
セッション3:自律型AIエージェントDevinを全エンジニアへ展開!!ラクス開発本部のAI駆動開発事例
登壇者:開発管理部 開発管理課 課長 池田智裕
最後のセッションでは、開発本部全体を横断的にサポートする開発管理課 課長の池田が登壇。「現場が開発に専念できる環境を整える」というミッションのもと、いかにしてAIツールを全社的に推進しているかが語られました。
ラクス全社では「スピードアップ」と「AI活用による生産性向上」を重点取組に掲げており、開発本部における推進役を開発管理課が担っています。
発表では、AIツール導入の歴史が第1弾から第4弾まで紹介されました。
- 第1弾(2023年5月):GitHub Copilot Businessの導入
- 検証の結果、平均12%の稼働削減効果が見られ、年間1億円以上のコスト削減効果が見込めることが判明し、全エンジニアへ展開。
- 第2弾(2024年2月):GitHub Copilot Enterpriseの導入
- 自社のプライベートリポジトリを学習させることで、より精緻な提案が可能に。
- 第3弾(2025年3月頃):Devinの導入
- 「生産性爆上がりですよね?」と期待を寄せ、即座に導入検証を決定し、全エンジニアに開放。
- 第4弾(近況):Cursor / Junie / Claude Codeの導入
- 次々と生まれる新しいツールに対し、エンジニアがチームや自分のスタイルに合ったものを選択できる環境を整備。
ツール導入の大きな課題は、法務やセキュリティの確認に時間がかかること。そこで、「顧客情報を入力しない」というルールを前提に、開発本部内のチェックリスト運用で利用OKとするフローに変更。これにより、検証開始までの期間を数週間から数日へと大幅に短縮しました。
「新しいAIツールが日々生まれる中、組織全体のAIリテラシーを高めていくことが重要」という池田の言葉は、変化の激しい時代を乗り越えるための力強いメッセージとなりました。
まとめ
今回の「RAKUS AI Meetup」では、現場主導のボトムアップな取り組みと、経営層や管理部門によるトップダウンの力強い推進が両輪となって、ラクスのAI開発が加速している様子がリアルに伝わってきました。
各サービスにおける具体的な課題解決から、開発本部全体の生産性向上まで、AIを「使う」だけでなく「使いこなす」ための試行錯誤が随所に見られ、非常に刺激的なイベントでした。
ラクスでは、今後もAIに関する技術イベントを定期的に開催していく予定です。 そこで、皆様へ耳寄りなお知らせ!
RAKUS Tech Conference 2025 開催します!!
「RAKUS Tech Conference」は、SaaS開発における取り組みや知見を紹介する、ラクス開発本部主催の技術カンファレンスです。
本カンファレンスでは、私たちが24年間で培ってきた技術的な強みと知見、そして現在進行形で取り組んでいる変革へのチャレンジについて、開発現場のリアルな声とともにお届けします。
AI駆動開発、大規模チームのマネジメント、長期プロダクトが向き合う技術的負債、そして新規サービスローンチの舞台裏まで。 ラクス開発本部の"今"と"未来"を、この機会にぜひ体感してください!!
お申込みはこちら https://rakus.connpass.com/event/359025/
最後までお読みいただき、ありがとうございました。