RAKUS Developers Blog | ラクス エンジニアブログ

株式会社ラクスのITエンジニアによる技術ブログです。

累計18,000社の声とデータで、価値あるAIプロダクトへ ~ラクス「AIエージェント専門組織」の挑戦~

こんにちは、AIエージェント開発課 課長の石田です。

「ITサービスで企業の成長を継続的に支援します」

これが私たちラクスのミッションです。

私たちはBtoB SaaSの提供を通じて、企業の成長につながる業務効率化や生産性向上に向き合ってきました。 そのために、開発生産性向上はもちろんのこと、顧客の体験価値向上や顧客の業務効率化を目的とした機能開発にも組織を挙げて取り組んでいます。

その最も新しい取り組みが、2025年5月に設立した専門組織「AIエージェント開発課」です。

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AIエージェントはユーザーの指示がなくとも自律的に目的を理解し、最適なタスクを実行することが可能です。 複雑な業務フローを持つBtoB領域においても、非常に大きなインパクトが期待でき、ラクスが最も注力していく領域の一つです。

そこで本記事ではラクス初・AIエージェント専門組織の挑戦についてご紹介したいと思います。

経費精算 × AI には圧倒的な顧客貢献余地がある

経費精算という、企業のあらゆるバックオフィスに存在しながら、いまだに紙・Excel・メールといったアナログな処理が根強く残る業務領域に、更なる楽を実装していきます。

そこで我々が最初に取り組むのは、「楽楽精算」でのAIエージェントの提供です。

「楽楽精算」でも、経費申請の申請やチェックなどはできましたが、人の手で行っている処理が多かったです。 例えば、申請書の入力やサービス区分の選択、紐づけるクレジットカード利用明細を探したり、それらの確認です。

この業務は、申請ミスや差し戻し、手入力の負担といった“ノンコア業務”に工数が偏りがちな構造的課題を抱えており、自動化・最適化の余地が非常に大きい領域です。

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すでに公開しているAI機能と合わせて、申請者のワークフロー全体の「めんどくさい」「煩わしい」「いい感じにしてくれないかな」を、AIエージェント機能により解決しようとしています。

公開中のAI機能と、今後のAIエージェント機能の役割例

最速で価値提供できる組織へ向けた3つのポイント

AIエージェント開発課は「顧客に価値を最速で届けられるAI組織」として、以下を強みとしていきたいと考えています。

1. AIエージェント時代に応える、スピードと探究で価値を生む開発スタイル

ラクスの開発は、「熟考を重ねた綿密な設計と開発」を得意としています。法要件への正確な対応に強みを持っていますが、変化の速いAI領域では高速な試行錯誤が必要です。ラクスでは、目的に応じて柔軟に開発プロセスのあり方を変化させています。

意図的に、AIエージェント開発課では、「楽楽精算」の開発チームとは異なった組織として立ち上がりました。この中には、エンジニアだけでなくUXデザイナーや営業メンバーなども内在します。 また、エンジニアメンバーは得意領域を持ちつつも、プロダクト開発に必要な業務は、だれであれ、参加します。例えば、顧客からヒアリングした結果を、全員で議論し、UI/UXを含めた改善案を出し合うなども、全員参加します。

これにより、会社としては前例がないほど、高速に検証サイクルを回しており、組織立ち上げ1ヶ月経たずして、モックアップを3つ作り、それを用いたお客様ヒアリングを開始し始めました。 引き続き、AIエージェントという未知の領域に対し、既存の楽楽精算に縛られることなく、新しい顧客体験をゼロベースで探索しています。

2. ユーザーの声を開発に直結

ラクスのプロダクト開発チームは通常、「開発本部」という開発専門組織に所属します。しかし、AIエージェント開発課ではあえてビジネスサイド直結の組織としました。

これは私たちが一次情報への近さを優先したためです。顧客ヒアリング等を柔軟に行えるチームとし、プロダクト仮説と技術検証のループを高速化することが目的です。

立ち上がって1ヶ月と経っていませんが、作成したプロトタイプをもとに顧客ヒアリングを開始し、実際に顧客からの声を頂いております。 また、その声をすぐにエンジニア・デザイナーがキャッチアップできる体制が整っています。

3. 16年分・延べ18,000社分の多彩な業務データを活用

「楽楽精算」はこれまで18,000社に導入され、経費精算システム累計導入社数No.1となっています。蓄積された16年分の業務ログや申請傾向など、多様な業種・業態のリアルなデータに基づいた開発が行えます。この“豊富なリアルデータ”と“多様なステークホルダー”を活かして、リアリティのあるAIエージェントサービスを作っていきたい考えです。

最初に取り組むのは、「経費申請ワークフロー」

初期スコープとして注力しているのが、経費精算の中でも手間の大きい「経費申請ワークフロー」です。

領収書をアップロードすると、AIエージェントが内容を解析・構造化し、関連のあるデータ(例えば、事前申請やクレジットカード利用明細など)を探し出します。 それらのデータを活用して、申請用データを提案します。これにより、現在は申請者が自ら考え入力していた負担を軽減します。

当社プレスリリースより
https://www.rakus.co.jp/news/2025/0501.html

  

技術的な方針としては、顧客の業務課題を最も早く解決できることとしています。 そのため「過去の履歴からの推論」や「定型処理のルールベース自動化」など、最適な技術要素を段階的に組み合わせながら構築することとし、必ずしも(現時点では)汎用的なAIエージェントを目指さない判断をしました。

経費精算業務は定型化・構造化されている部分も多く、LLMが事前定義されたタスクを実行する「エージェンティック・ワークフロー」を採用しています。この延長で、AIエージェントに即したUIUXの導入も検討していきます。 AIエージェント技術を使えば、申請から承認までの一連の経費処理を完全に自動化できるかもしれません。しかし私たちは、申請者や経理担当者が「自分は内容を理解し、きちんと確認した」という安心感と納得感を得られることを最優先に位置づけました。そこで、エージェントを“代行者”ではなく“支援者”として設計しています。

AIエージェントを通じて、仕事の意味も変えていきたい

AIエージェント開発課はまだ始動したばかりですが、経費申請ワークフローを皮切りに、今後も積極的に周辺領域へと広げて参ります。

そのために、最新のAI/AIエージェント技術を探求しつつ、お客様の体験価値を追求する「顧客志向」を大切にしています。

最終的には、「ヒトとAI」が相互助力により、より心地よい業務体験を実現・提供していくことを目指しています。そんな未来に向けて、システムをご利用いただいているお客様の声を原動力としながら一歩ずつ進んでいきます。

まだ始まったばかりのAIエージェント開発課ですが、プロジェクトの進行や技術的な実装が進展したらまたのブログでもご報告していきます。楽しみにお待ちいただければ幸いです。

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