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ハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)とは? - インフラエンジニアが改めて学習してみた -

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こんにちは。初めましてインフラエンジニアをしていますmoja_chiroです。

今回初めて投稿します。初回ということもありサービスのベースとなっているハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)の概要と事例を少しご紹介したいと思います。

・ハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)について書く事になったきっかけ

インフラエンジニアとして働いてきましたが、当社のサービスを支える仮想基盤のテクノロジーであるハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)の概要部分について改めて学習し直しました。
比較的規模の小さなシステムの仮想基盤として導入するには、ハードルが高いというイメージを持ってしまうHCIですが、私自身がHCIを使用した仮想基盤の運用チームのメンバーとなり、自分自身の学習のために概念とメリットを纏めたいと思います。
深まった知識をもとに運用業務や今後ますます発展していくHCIの分野に着いて行けるエンジニアを目指します。

今回の記事は以下の書籍をもとにまとめました。

・参考文献

発行所:株式会社翔泳社
著者:ソフトバンク コマース&サービス株式会社
Nutanix Hyper Converged Infrastructure入門
www.seshop.com

・ハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)とは

言葉の意味を正しく把握するためにウィキペディアで確認すると、ウィキペディアには以下のように記載されています。

コンピュータシステムにおける計算機能、ネットワーク機能、ストレージ機能といった基盤機能を、仮想化機能と標準的なハードウェアだけを用いて実装し、水平スケールを容易にしたシステムアーキテクチャ、あるいはこのアーキテクチャを採用したアプライアンス製品群の名称。
引用元:Wikipedia

記載されている言葉をもとに自分流に「HCI」を表現してみました。

・自分流「HCI」とは

従来型の仮想基盤を構築するためには、3つのハードウェア(サーバ(CPU、メモリ)、ストレージ、それらを繋ぐネットワーク機器)が必要でした。リソース管理やストレージの分散処理をソフトウェアに置き換えることにより、複数のサーバを並べるだけで仮想基盤の構築が可能となり、ストレージやネットワーク機能をサーバ内で完結させることが可能なシステムアーキテクチャ
この構成により、サーバを追加していくことで仮想基盤全体のリソース拡張を行えるシステムがHCIであると考えます。
今まで個別の機器を使用して構築していた仮想基盤が、ソフトウェアとサーバで構築することにより柔軟でシンプルな構成で実現できるプラットフォームである。

というものがハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)だと理解しました。

・3層構造のインフラストラクチャ

3層構造とは、従来型のシステム基盤とHCIの構成を比較する際に従来型のシステム基盤のことをさす表現で、3層構造の3層とは、次の3つの機器をさしています。

  • コンピュータノード
     ・・・演算を提供するCPU、メモリを実装したコンピュータノード
  • SAN
     ・・・ストレージエリアネットワーク(Storage Area Network)
        コンピュータノードと共有ストレージを接続する高速なネットワーク
  • 共有ストレージ
     ・・・データを蓄積し、冗長化されたコンピュータノードへ保存領域を提供する専用共有ストレージ

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3層構造イメージ図

・従来型3層構造の課題について

過不足や偏りがあると思いますが、様々な視点で考えられる課題を上げてみます。
大きく次の3点が考えられます。

  • 高い技術力が求められる機器を複数使用して構築されているため、エンジニアには高度なスキルが必要になる。
  • 多種多様な機器で構成されているため、管理が複雑になり運用コストも高くなってしまう。
  • 共有ストレージのストレージコントローラの性能に依存してしまう。

・HCIのメリット

HCIを利用するメリットとしては次の3点があります。

  • シンプルな構成
  • 統合管理ツール
  • 拡張の容易さ
・シンプルな構成

HCIは共有ストレージを持たないシンプルな構成となっております。
HCIの構成を管理するシステムが各ノードを検出し、必要なクラスターを構成するとともに、共通基盤として必要なストレージやネットワークをソフトウェア的に管理、提供することが可能です。

ストレージは、分散ファイルシステムを利用したソフトウェアストレージとして各ノードにまたがり、全体をストレージ空間としてコンピュータリソースとハイパーバイザーに提供しています。

その結果、3層構造で必要だったSANと共有ストレージが不要となり、システム全体がスリム化され、管理・運用コストを低減させることが可能です。

・統合管理ツール

HCIを一元管理できるツールで、リソースの追加やストレージの拡張、ネットワークの基盤を提供しています。

ノード追加、ストレージの拡張などのシステム変更に伴うメンテナンス時間はなく、統合管理ツールから数クリックで作業を終了させることが可能です。

また、HCIで動作する仮想基盤を監視し、利用状況に応じてコンピュータリソースを再配置し、システム全体のリソース利用効率を自動的に管理します。

・拡張の容易さ

リソース不足が予想される場合、システムの拡張やシステムリソースの追加が必要になった場合は、構成するノードを要求量に応じて適宜追加可能です。

ITシステム基盤をシステムの成長と要求に合わせて投入することが可能なため、新たにシステムを導入するための初期検討の工数の削減に繋がります。

初期はオーバースペック気味になりがちですが、初期導入機器を選定することなく構成できるため、初期コストの圧縮も可能となります。
 

・HCIシステム

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HCI イメージ図

次に主なHCI製品を挙げます。

HCI 提供メーカー ハイパーバイザー
Nutanix Nutanix AHV(KVM)、vSphere、Hyper-V
Dell EMC VxRail Dell EMC vSphere
HPE Hyper Converged HPE(Hewlett Packard Enterprise) vSphere、Hyper-V

HCIは各社独自の特徴があり、以下のようなシステムが提供されています。

〇Nutanix

インターネットサービス基盤を支えるWebテクノロジーをオンプレミスで具現化することを目指して開発されたHCIです。
ソフトウェアデファインドされたアーキテクチャは理論上無制限に拡張可能で、Nutanix社が自社開発したハイパーバイザーAHV(Acropolis Hypervisor)のほか、VMware vSphere やMicrosoft Hyper-V などの実装が可能となっています。

Nutanix社のハイパーコンバージドインフラストラクチャー(HCI)のページ

Acropolis (AOS): ソフトウェア定義ストレージソリューション| Nutanix

Dell EMC VxRail

VMware社のハイパーバイザーvSphereをコアテクノロジーに発展したHCIです。ハードウェアを統合管理するマネジメント機能、ソフトウェアデファインドストレージのvSANを標準搭載し、VMware社のソフトウェア思想を具現化しています。

DELL Technoloriesのハイパーコンバージドインフラストラクチャー(HCI)のページ

VxRailハイパーコンバージド インフラストラクチャ アプライアンス | Dell Technologies Japan

〇HPE Hyper Converged

ソフトウェアデファインドストレージ(Software Defind Strage:SDS)製品であるHPE Store Virtual VSAをコアテクノロジーに発展したHCIです。定評のあるハードウェア基盤、管理ソフトウェアとともにvSphereなどのハイパーバイザーを実装可能で、統合管理されたシステムを実現しています。

HPE社のハイパーコンバージドインフラストラクチャー(HCI)のページ

ハイパーコンバージド インフラストラクチャ(HCI) | HPE 日本

・HCIを利用することで解決できる課題

従来の3層構造が持っていた課題とHCIを導入することで得られる機能と利点について比較します。

項目 3層構造 HCI
構成の自由度 あり 製品により異なる
共有ストレージアレイ 必要 不要
システム構成 複雑 シンプル
事前検証済み構成 一部あり 全て検証済
設計・展開 長期間のプロジェクト 迅速に展開
システム成長設計 スケールアップ スケールアウト
対障害性設計 複雑 容易
運用の専門性 高い専門性 適度な専門性
統合管理 別途必要 標準提供

この中で、日々運用を行っている立場として、メリットとして感じられる項目は次の4点が挙げられます。

① システム構成:シンプル
 ・・・サーバのハードウェアを揃えることで、大きな違いもなくリソースの把握ができます。
② 対障害性設計:容易
 ・・・データ冗長化を実現していることにより、クラスターの障害設計が容易にできます。
    また、サービスの稼働に影響を出さずに、復旧作業を簡単に行うことが可能です。
③ 運用の専門性: 高い専門性
 ・・・シンプルな構成で構築できているため、複数の専門的知識が不要となり運用コストを抑えられています。
④ 統合管理:標準提供
 ・・・統合管理ツールが標準で提供されています。
    この統合管理ツールでは、シンプルにサーバ、ネットワーク、ストレージの設定や状態監視も可能です。
    また、仮想マシンの作成、バックアップ等運用に必要な管理や作業が一元的に可能です。

・ITインフラストラクチャに求められる課題

  • よリ早く必要な実行環境が入手できること
  • 必要なリソースを必要なコストで入手できること
  • 不要なコストがかからず容易に管理できること

パブリッククラウドを利用してITインフラストラクチャを導入することが多くなってきているが、まだハードウェアを所有したオンプレミスの環境も多く存在しています。パブリッククラウドは目的に応じて必要なリソースをリソースの重要度に応じたコストで迅速に入手できるというメリットがあります。このような利便性はオンプレミス環境のITインフラストラクチャでも同様に必要とされ、プライベートクラウドという形で徐々に導入されています。

プライベートクラウドの課題は、需要増に合わせた拡張性で、システム導入時に想定された処理量を超えた場合に柔軟に対応できるシステム拡張性が従来のシステム基盤には不足していました。
これらの課題にもHCIは十分に応えることができます。HCIはITインフラストラクチャのあり方を大きく変え、新たなクラウド環境へのステップも提供しています。

・現状と今後

当社のSaaSサービスの中でもこれらのハイパーコンバージドインフラストラクチャー(HCI)を使用した仮想基盤を導入しています。 複数台のサーバを使用したスケールアウトも短期間で完了でき、業務へのインパクトもなくサービスインさせることが可能となっています。 また、メンテナンス作業の時においてもデータ冗長化の仕組みを利用することで、サービス停止を伴わずに作業を行う事も可能です。 そのため、チームメンバーの稼働工数を最小限に押さえることができます。 データの冗長化の仕組みである、レプリケーションファクターの仕組みについては、改めて勉強していきたいと考えています。

これらの実体験から、HCIの柔軟性や将来性を感じながら運用を行っています。 ITインフラストラクチャに求められる課題を解決できるHCIを導入することで、圧縮できた稼働工数から新たな課題を解決していき、改善を進めていきたいです。


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