RAKUS Developers Blog | ラクス エンジニアブログ

株式会社ラクスのITエンジニアによる技術ブログです。

『自分自身をプロダクトマネジメントせよ』―ラクス流PdM再育成のリアル

こんにちは、プロダクト部 部長の稲垣です。(自己紹介やこれまでのキャリアについて↓をご覧ください。) tech-blog.rakus.co.jp

2025年12月4日(木)に当社ラクスの紀井が登壇し、『AI時代の「ジュニア不要論」に異議あり!未経験から戦力PdMを生み出すOJT戦略とは?』 2025.pmconf.jp

というテーマで「PdM育成」について登壇しました。

そこで私も、現在、直下で1名のPdMを「再育成」していることもあり、ラクスにおけるPdM育成のリアルを少しフィクションを交えつつお伝えします。

■ はじめに

メンバー概要

  • 年齢:20代後半
  • PdM歴:約3年(ラクス入社前)
  • 経歴:

    新卒で大手IT企業のPdMとして入社。学生時代はベンチャーでエンジニアとして3年以上アルバイト経験。インバウンド向けのトラベル系プロダクトを担当。

ラクスのプロダクトマネージャーの選考プロセス

1. 書類選考

2. カジュアル面談

  • 稲垣が15〜20分ほど会社と業務内容の説明
  • 選考要素なし。その場で辞退してもOK

3. 一次面接(オンライン)

  • 稲垣とリーダーPdMで実施

4.最終面接(対面)

  • 部長が担当

このメンバーの採用時点での評価は以下です。

採用時点の評価

  • 新卒PdMとして3年で一定成果を出していた
  • ビジネス側・エンジニア側双方と連携経験あり
  • 担当していた業務内容の整理・意義を高い解像度で説明できた (※言語化は今後の課題として認識)
  • 行動力が非常に高く、インタビューでも多くのエピソードあり
  • ラクスの開発組織が大事にする顧客志向で業務をしていた

複数のSaaS企業と比較した結果、

「サービスの成長性」「PdM組織の成熟度」「Biz/Dev バランス」

の3点を理由にラクスを選んでくれました。


■ 入社後 → 再育成に至るまで

  • 2024年夏:入社(1か月オンボーディング)

  • 2024年夏:「楽楽明細」でPdM業務開始(当時は担当PdM 1名+本人)

  • 2025年冬:軽微な案件を担当開始。ステークホルダーとのコミュニケーション齟齬が発生 → 一部クレームもあり役割を縮小

  • 2025年春:リーダー判断で「一度プロダクト担当を外す」決定 → 再育成フェーズへ移行

  • 2025年秋:チーム規模拡大により、再育成担当者を私に変更

ラクスでは入社後1〜2ヶ月をオンボーディング期間としています。

入社半年以内に大きな成果を求めることはありません。特に入社1ヶ月目は 「会社の理解」「製品解像度の習得」に集中してもらいます。


■ オンボーディングについて

ラクスでは「新入社員受入チェックシート(約50項目)」を進めてもらいます。

バディ体制
  • メインバディ:最初の業務フォローを担当
  • サブバディ:メイン不在時の相談先

また、1ヶ月間はマネージャーと週1〜2回の1on1を実施し、初期の6ヶ月目標もリーダー・メインバディで設定。

早期に「製品解像度」を上げる環境を整えます。

1〜2週目からはチャットや各種MTGにも参加し、 実務の情報もキャッチアップしてもらいます。多くのPdMは1ヶ月後半で 「そろそろ案件を担当したい」と意欲を見せる方が多いため、そこから軽微な案件をアサインする流れが一般的です。

今回のメンバーも同様でした。


■ PdM担当後に起きた課題

担当後2〜3ヶ月は特に問題ありませんでしたが、3ヶ月目以降から以下のような課題が顕在化しました。

  • 案件PRDの質

  • 課題の解像度が粗い

  • ステークホルダーとの認識齟齬が複数回発生

振り返ると、主因は以下の 「アサインミス」 だと判断しています。

  • それまでとは次元の違う難易度の案件を担当させてしまった
  • その案件は、メインバディが担当しても難しかったレベルの内容だった

PdMはステークホルダーとの信頼が生命線です。ここで信頼が揺らぐと、その後の業務が非常に進めづらくなります。そのため、本案件から外し、完全に再育成に入る決断をしました。

再育成を選んだ理由は以下です。

  • これまでの経験は「デリバリー寄り」で、「ディスカバリー」が弱かった

  • 担当プロダクトは今後も高難易度案件が発生し続ける(OJTでは限界がある)


■ 再育成の進め方

ラクスでは、若手エンジニアをPdMへキャリアチェンジさせる際に育成カリキュラムを作成しました。 今回はそれをベースに進めています。

カリキュラム概要

1.課題図書 → レポート作成 → メンターと議論

■課題図書

問題解決――あらゆる課題を突破する ビジネスパーソン必須の仕事術

ロジカル・プレゼンテーション――自分の考えを効果的に伝える戦略コンサルタントの「提案の技術」

■レポート内容

  • 書籍を読んで印象に残ったことや気づき

  • 自分ができている/できていない部分の整理

  • これまでの実務事例との紐付け※フォーマット自由

2.社内e-learning受講
  • ロジカルシンキング

  • ラクスの事業理解

ラクスには豊富なe-learningコンテンツがあり、必須なものもあればそうでないものもあります。その中で、ピックアップしたものを受講してもらっています

3.「自分のイシューは何か?」ワーク

ワーク:書籍『イシューからはじめよ』を読んだ上で「自分自身のイシューとは何か?」を提示せよ

これは難易度が高く、平均して4〜5回のレビュー・議論を行います。

今回は当初リーダーがメンターとして実施しておりましたが、リソース逼迫により途中から私が直接担当しました。


■ 「自分のイシュー」課題の狙い

狙いは以下の4点です。

1. ディスカバリーには「なぜ?」を問う力が重要

2. 多くの課題を見つけても「イシュー」を特定しないことにはディスカバリーできたとは言えない

3. 自分自身を対象にするため、他者への迷惑がかかりにくい

4. 成長の鍵である「メタ認知」を強化できる

育成側・育成される側双方に「評価基準」を最初から提示しています。 

※育成される側に徐々に開示している

チェックポイント(育成側)

  • 本人なりの「あるべき姿」が定義されている
    • 単なる現状改善ではなく、自分の頭で考えた言語化になっている
  • 「現状」と「あるべき姿」のギャップが構造化され、MECEになっている
    • 課題と問題が区別できている
    • 一次情報を元に事実と解釈を分離できている
  • 最終的なイシューが以下を満たす
    • 本質的な選択肢である(解決すれば価値が出る)
    • 答えを出せる(解決策を示せる)
  • イシューまでの流れがストーリーとして一貫している

ここまで読んでお気づきの方もいると思いますが、 これはそのまま 「プロダクトマネジメント」 です。

つまり、

「自分自身」をプロダクトと見立てて、プロダクトマネジメントしてもらう

というのが本課題の本質です。


■ 次の育成課題へ

このメンバーは10月に本課題をクリアしました。業務と並行しながら 約3ヶ月で完了 した点は素晴らしい進捗だと思います。

次に取り組んでもらっているのは——

「PdM・デザイナーの業務をプロダクトマネジメントせよ」

具体的には、

PdM/デザイナー業務の中から課題を発見し、それを解決することでチームに貢献する

というテーマです。

この課題の狙いは以下の3点です

1. 「自分のイシュー」より範囲が広くなり、難易度が格段に上がる

2. 成功すればチーム貢献となり、関係者からの信頼を獲得できる

3. チーム内でバラバラに取り組んでいたAI活用・生産性改善の棚卸しができる

私が育成を直接見ているため、難易度調整も可能で、成功確率を高められます。再育成を担当してまだ2ヶ月ほどですが、今の課題を確実にクリアし、2026年4月からは高いレベルで実案件に戻ってほしいなと思っています。


最後に

採用・オンボーディング・育成について紹介しましたが、ラクスは「人への投資」を非常に大切にしています。

また、記事を読んでラクスのプロダクト部に興味を持ってくださった デザイナー/PdM の方 は、ぜひカジュアル面談からご応募ください。

●採用情報 デザイナー career-recruit.rakus.co.jp

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