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プロダクトマネージャーが感じる孤独は「悪」なのか?

自己紹介

ラクスでPdMをしております。@keeeey_mと申します。

現在の担当商材は、楽楽シリーズ(楽楽精算、楽楽明細、楽楽電子保存)を担当しており、個人としては楽楽精算×AIの担当、 楽楽明細・楽楽電子保存PdMチームのリーダーをしております。

こんな方におすすめ

  • プロダクトマネージャーとして孤独感を感じている方
  • プロダクトマネージャーをマネジメントする立場の方
  • プロダクトマネージャーを目指している方
  • 組織開発やチームマネジメントに携わる方

目次

はじめに:PdMの孤独という普遍的な課題

先日、メンバーからのとある声を知り、プロダクトマネージャー(PdM)の孤独について深く考える機会がありました。この投稿は、私自身の経験とも重なり、多くのPdMが感じている普遍的な課題ではないかと感じました。

PdMという役割に就く人が感じる孤独感は、単なる職場での寂しさとは質が異なります。それは、役割の本質に根ざした、より深い次元の孤独です。

PdMが感じる孤独の本質

組織における立ち位置の特殊性

PdMは開発チーム、デザインチーム、マーケティング、営業、経営陣など様々なステークホルダーの間に立つ「ハブ」的な役割を担います。しかし、どの部門にも完全には属さないため、帰属意識を感じにくく、自分の居場所を見つけるのに苦労することがあります。

意思決定の重圧と責任

PdMは製品の方向性や優先順位等について重要な判断を下す必要があります。会社や製品のフェーズによってPdMの役割は異なったりするものの、PdMが下すその決定は往々にして誰かを失望させたり、トレードオフを伴います。最終的な責任を負う立場にいながら、直接的な権限は限られているというジレンマも抱えています。

解像度の格差による孤独

プロダクトマネジメント、プロジェクトマネジメント、さらに開発の設計部分まで理解できるPdMは、誰よりも早く問題や危機感を察知します。しかし、その複合的な視点から見えてくる問題を、特定の専門領域に特化した視点を持つ人に理解してもらうのは困難です。

孤独と向き合う:個人としてのアプローチ

孤独を力に変える

この孤独感は必ずしも解決すべき問題ではないと、私は考えています。なぜなら、それは責任ある意思決定の証でもあるからです。重要な決断を下す時、最終的には一人で判断し、その結果に責任を持つ必要があります。他人の意見に左右されず、データと自分の信念に基づいて決断する瞬間には、必然的に孤独感が伴います。これは逃げられない、そして価値のある経験です。

客観性を保つための距離感

あらゆるステークホルダーと適度な距離を保つことで、どこかの部門に偏った判断をすることなく、プロダクト全体の最適化を図ることができます。この「中立的な立場」は、時として孤独を感じさせますが、PdMの重要な強みでもあります。

組織として何ができるか

とはいえ、プロダクトマネジメント組織を率いるリーダーとして、適切なサポート体制を整える必要があると考えています。 実際に効果があったこと、試行錯誤しながら取り組んでいることです。

複数名体制による物理的・精神的な負荷の分散

私の経験では、PdMを複数名体制にすることで、孤独問題が大きく解消されました。同じ立場・役割で協業できるメンバーがいることで、物理的にも精神的にも負荷が下がります。特に、意思決定の重圧を共有できることは、大きな安心感につながります。

早期発見と迅速なサポート

過去の失敗経験から、メンバーが一人で問題を抱え込んでしまう前に、早期に気づき、サポートすることが重要だと学びました。

  • 定期的な1on1ミーティングでの状況確認
  • 普段の会話の中での変化の察知
  • 「できない」という現状の言語化を促す

段階的なアプローチ

組織として以下のような段階的なアプローチを実践しています。

  • こまめな壁打ちの時間の確保
  • 共感と理解を示すコミュニケーション
  • メンバーからのアクションベースでの対応(マイクロマネジメントを避ける)
  • 外部イベントのレポート共有など、情報共有の機会創出

実践的なアドバイス

これらの取り組みを実施する上で、以下の点に注意しています。

  • 過度な介入を避け、メンバーの主体性を尊重する
  • 問題の早期発見のための観察力を磨く
  • 共感を示しつつも、具体的な解決策を提示する
  • 組織の規模や状況に応じて、柔軟にアプローチを調整する

まとめ:孤独と健全に向き合う「場」を作る

私自身もPdMとして、複数の視点から同時に物事を見ることで生まれる内的葛藤や、解像度の高さゆえの孤独を経験してきました。その中で、理解を示してくれる人が一人でもいることの大切さも痛感しました。

だからこそ、組織としては孤独そのものを「悪」として排除しようとするのではなく、孤独と健全に向き合える場を用意することが重要だと考えています。これは単なる愚痴の吐き出し場ではなく、孤独感の意味を理解し、それを力に変えていくためのスペースです。

PdMという役割の本質を理解した上で、孤独を完全に取り除こうとするのではなく、それと健全に共存する方法を組織として支援する。これこそが、真にPdMを理解したリーダーのアプローチだと考えています。

PdMが「一人で戦っている」のではなく「組織に支えられながら、時には一人で決断する」という状態を作り出すこと。それが、プロダクトマネジメント組織のリーダーとして目指していることです。

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