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AIで経費精算業務60%削減!製品戦略と開発ロードマップを公開!

はじめに:経費精算業務の現状と課題

当社は、経費精算業務を効率化するプロダクト「楽楽精算」を提供しています。

現在、多くの企業が紙やExcelで経費精算業務を行っており、申請から承認までに膨大な時間を要しています。
特に手作業による申請チェックや書類不備の差し戻しが、経理担当者の業務負担を増大させる要因となっています。

このような状況では、経理担当者が業績管理や予算策定といったコア業務に集中することが難しくなります。
こうした問題を解決するため、「楽楽精算」ではプロダクトでのAI活用を一層推進することとしました。

プロダクト開発に関わるエンジニアの皆さんにとっても、AIを活用したプロダクトの提供価値向上は大きな関心事ではないでしょうか。
一方で、AI導入の際にはインパクトの見積もりや、不確実性の扱い方について悩む場面もあると思います。

そこで本記事では経費精算業務の効率化に向けた、AIを活用した製品戦略と開発ロードマップをご紹介します。
ロードマップ策定の目的やプロセス、不確実性への対処、期待されるアウトカムにも触れていますので、皆様のご参考になれば幸いです。

なぜAIが必要なのか

少子高齢化による労働力不足が進んでおり、企業はより少人数で高い付加価値を生み出すことが急務です。 経理業務をはじめバックオフィス業務も例外ではなく、AIを活用したさらなる効率化が求められます。

またAI活用により、既存プロセスのシステム化を超えた、経費精算のDX(業務の抜本改革)が可能になります。 業務の最適化を通じて、ガバナンス向上と経理担当者がコア業務に専念できる状態が期待できます。

変化の激しいAI技術の不確実性をどう扱うか

AIは変化が激しく、AI活用によりプロダクトの提供価値がどれほど向上するかは不確実性がついてまわります。 計画を立てても、実際に運用してみると想定外の課題が発生することも少なくありません。

そのため、PoC(概念検証)を行い、最小実用プロダクト(MVP)を経て実運用に至る段階的なアプローチが重要になります。 最初から大きな範囲に適用するのではなく、最も重要な機能からスモールスタートで進めることが成功の鍵となると考えています。

AI開発ロードマップの策定目的

ラクスが「楽楽精算」のAI開発ロードマップを策定する主な目的は、 経理担当者がより戦略的、創造的なコア業務に専念できる状態を創出する道筋を描くことです。

冒頭で述べた通り、多くの経理担当者は経費精算などのノンコア業務に多くの時間を費やしており、企業の売上や利益に直接貢献する業務に注力できていないという課題があります。 AI技術を活用して経費精算業務を効率化し、経理担当者の負担を軽減することで、彼らが本来注力すべきコア業務に時間とリソースを割けるようにすることを目指しています。

どう実現していくのか

ラクスは、AI開発ロードマップに沿って、以下のステップでAI機能を実装し、上記の目的を実現していきます。

出典:当社プレスリリース

 
ステップ1:申請者・承認者向け機能のAI活用

最初のステップとして、使用頻度が高く、利用ユーザー数が多い「申請者・承認者向け」の機能からAIの導入を開始します。
申請者が経費申請を行う際の入力ミスを削減し、それに伴う差し戻しを減らすことで、承認者や経理担当者のチェック作業を軽減します。

今後リリース予定の「勘定科目の入力補助機能」は、このステップにおける重要な取り組みの一つで、現在PoCを進めているものです。 この機能は、AI-OCRによって領収書や請求書のデータを読み込み、過去の申請履歴や添付された領収書データを基に、AIが適切な勘定科目の入力を補助します。 これにより、申請者がどの勘定科目に分類すべきか迷うことが減り、経費申請時のミスや差し戻しを大幅に削減することが期待されています。

ステップ2:経理担当者向け機能のAI活用

次のステップとして、より専門性が求められる「経理担当者向け」の機能にAIを活用していきます。
具体的には、企業のガバナンス向上のための経費使用規定違反や利用目的が不明瞭な経費申請を検知するAI機能や、 経理担当者の業務負荷を大きく削減するためのAIによる通常経費申請の自動承認・否認機能などの開発を目指します。

AI開発ロードマップの概要

ラクスは、2025年3月期から2029年3月期までのAI開発ロードマップを策定し、段階的にAI活用を進めることで、経理業務全体の生産性向上を目指しています。

出典:当社プレスリリース
 
  フェーズ1(2025年3月期~2026年3月期):経理担当者のチェック作業軽減

  • 経費申請の入力補助機能
  • 申請前の不備をチェックする機能
  • 経費申請内容のチェック機能
  • 承認経路を適切化する機能

フェーズ2(2027年3月期~2029年3月期):経理担当者がコア業務に専念できる状態の創出

  • 経費使用規定違反や利用目的が不明瞭な経費申請を検知する機能
  • AIによる通常経費申請の自動承認・否認機能の開発

開発ロードマップの詳細はプレスリリースにも掲載しておりますので、併せてご覧ください。 https://www.rakus.co.jp/news/2024/1212.html

どんなアウトカムを目指すのか

ラクスは、これらのAI機能を実装することで、1社あたりの経費精算作業時間を大幅に削減することを目指しています。
現在の楽楽精算にAI機能を導入することにより、60%以上の作業時間短縮が可能になると期待されています。

さらに、このロードマップは経費精算領域だけでなく、他の楽楽シリーズのサービスにもAI活用を視野に入れ、機能アップデートを継続することも視野に入れています。
ラクスは、顧客基盤の強みを生かし、バックオフィスサービスへのAI活用を早期に展開することで、顧客企業全体の業務効率化、生産性向上に貢献しようとしています。

そして、ラクスはバックオフィス業務支援領域で最も頼りにされる存在を目指しています。
AI技術を駆使して、顧客の要望や法改正などの外部環境の変化に柔軟に対応しながら、常に進化し続けることで、バックオフィス業務のDXを包括的に支援し、業界をリードする存在となることを目指しています。

プロダクトでのAI活用を成功させるために

AIを活用してプロダクトを成長させるためには、ユーザー視点でその有効性を評価し、不確実性を考慮しながら現実的な計画を立てることが重要です。
そのために、AIの導入目的を明確にし、単なる技術導入ではなく、課題解決を中心に据えることが求められます。

また、PoCからMVP、最適化といった段階を踏みながら、柔軟に計画を修正していくことも不可欠です。
そうすることで、AIの力を最大限に活かし、プロダクトの価値を高めることができると考えています。

本記事が、AI活用によるプロダクト成長のヒントとなれば幸いです。

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